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てんでんこ

このたび初めて知った言葉。

てんでんこ。


「地震てんでんこ」
「津波てんでんこ」

石巻の沿岸部での防災教育で語り継がれている教えだ。


地震や津波など大きな災害にあったときには
それぞれ一人一人がてんでんに自分の身を守りなさい。
家族のことは考えず、てんでんに逃げなさい。
てんでんに逃げて高いところで待っていれば必ず助けが来るから。
それが結局は家族やみんなの身を守るから。


小学校と中学校が隣接している石巻のある地域では
この教えに従い避難した小中学生に一人の被害も出なかった。

まずは、グラウンドで部活をしていたサッカー部員がいち早く校庭を高台に向かって走り出したそうだ。
この行動がほかの子どもたちの避難行動を引き起こすきっかけとなる。

大きな事故や災害時の心理状態としてよく言われるのが
「正常化の偏見」だ。

ショックを受けてパニックになりそうな心に
「大丈夫、大丈夫、そうたいしたことにはならないはずだ」
と心のバイアスをかけ平静を保とうとするのだそうだ。

平静を保つことはいいことだ。
でも、起きていることを矮小化してとらえようとしたがる心の動きは問題だ。
そのために避難が遅れるからだ。

しかし、先頭を切っててんでんに走り出したサッカー部員のおかげで
小中学校の子どもたちは速やかな避難行動に移れたわけだ。

さらに、避難指定場所に着くも、さらに高い場所を目指すことにして
中学生や小学校の上級生が低学年の子どもの手を引いて、より安全な場所への移動を完了したのだそうだ。
これは日ごろから小中合同での避難訓練の賜物だとのこと。

この2校で被害にあったのは、保護者が迎えにきて、別行動で帰宅した子どもだけだという。。。


一方で
皆さん報道でご存知と思うが全校児童の7割が痛ましいことになってしまった小学校がある。
こちらの場合は、親が迎えに来た子供たちはすぐに学校を離れたために無事であった。



実はこんなことがあった。
ご近所の友人に震災の後会ったときに謝られたのだ。

彼女の息子とうちの末っ子は同じ高校。
震災の時、たまたま高校の近くの市営テニスコートでテニスをしていた彼女は
どうせなら、と、自分の息子を車で連れ帰ったそうだ。
「私も冷静なようで慌ててたんだよね~、耕周君を乗せてくることを思いつかなくて、ごめんね~」と。

家も近いし、幼稚園からの長い付き合いだ。
二人は一緒に空手にも通っていたし、空気のようにお互い自然に接することができる親しさを持つ一方で、にぎやかで活発なうちの息子と、静かで穏やかで超秀才の彼とは、クラスも部活も違えば友人関係も違うし、それぞれである。
それになんといっても高校生である。自分のお尻は自分で拭けます。
私はそんなこと思いもよらなかったので、恐縮する彼女に逆にびっくりするくらいであった。


しかし、
その後いろんな報道を見るにつけ、彼女が心を痛めて心配したこともわかる気がした。

7割の子どもが犠牲になった小学校、親が連れて帰って無事だった親子は、しばらく自宅から出られなかったそうだ。
「申し訳なくて」

二つの意味があったと思う。
「うちの子だけ無事で」
という思い。
そして
「どうして、うちの子もつれてきてくれなかったの?」
という
お子さんを亡くしたご近所の親御さんのお気持ちへの思い。



だけど、私は思う。

人知の及ばぬ大災害の前で何が正しくて何が間違っているか、
避難ひとつとってもその判断は難しい。

だからこそ、

「てんでんこ」

であるべきなのだと。

実際、小中学校在校生がみんな助かったあの地区で、
親御さんに連れられて帰り被災された親子が
親切心からほかの誰かを連れていたら
どうやっても恨みを残すばかりである。


この言葉を一人一人が実践することが大切なのだと
改めて思うのだ。


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コメント 3

どぼちょんぱぱ

なるほど。。。判断は難しいですね。
by どぼちょんぱぱ (2011-06-11 20:27) 

500円

楓〇さん、どぼちょんぱぱさん

有難うございます。
正解はないし、誰も責められない、
想像を絶する災害でした。
by 500円 (2011-06-19 14:27) 

楓〇

てんでんこの話は震災直後に知って
心に刺さっていました。
nice!付けた日はコメントできなかった、重すぎて・・・。m(__)m
by 楓〇 (2011-06-23 22:47) 

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